佐藤成史FF徒然草第19話、フライフィッシング佐藤成史FF徒然草第19話、フライフィッシング佐藤成史FF徒然草第19話、フライフィッシング
佐藤成史
FF徒然草 第19話

☆車上荒らしにご用心!
 他人事ではない不愉快な事件

*6月の晴れた日に……

 爽やかな初夏の陽射しが降り注ぐ、それはそれは気持ちの良い日のことでした。
 その川は比較的交通量の多い国道沿いに流れていて、アクセスは容易です。友人と3人で、橋のたもとの道路脇にある駐車スペースに2台の車を停め、川へ降り立ちました。1台は群馬ナンバーの私の愛車、もう1台は地元ナンバーの車です。

 すぐ近くには草刈機の音が鳴り響き、下草刈りをする人の姿が2人見えました。さらに川へ降りる途中、地元の友人2人に、橋の上から声をかけられました。そのうちの1人が合流し、橋下にあるプール付近だけを4人で釣ることになりました。

 釣りは3人にまかせて、僕は水辺の風景や草花・昆虫を被写体にして、写真撮影に熱中していました。その後は木洩れ日の水辺で横になり、午後の惰眠をむさぼり、まったくもっていい気分のひとときを過ごしていました。

 その場所にはおおよそ1時間半ほどいました。その後、場所を移動することになり、川を上がりました。意欲的に釣りたかったわけではなく、川辺の雰囲気を楽しみたいという気持ちが強かったので、今度は下流のポイントを見てくることにしたのです。車に戻り、ロックを解除してリアハッチを開けると……荷室を覆うグレーのカバーの上に、黒っぽく光る小さな物体が数個落ちていました……。

 それがガラスの破片だということに、すぐに気付きました。それと同時に、「やられた!!」と直感しました。慌てて車内を見やると、後部座席右側の窓が割られ、直径30cm大の石がリアシートに投げ込まれているではありませんか。このとき駐車スペースに置かれていた車は全部で4台。そのうち被害に遭ったのは自分の車のみでした。

 北海道ではこういうことが頻繁に起こると、噂には聞いていました。支笏湖や渚滑川などでは、それが社会問題になっているそうです。しかし、それが自分の身に降りかかるとは想像すらしていませんでした。おまけに車を壊され、その凶器である石が車内に投げ込まれてあるとは……。少なくともまともな神経を持つ人間の仕業には思えず、その異常さと凶暴性に恐ろしさを覚えました。もっともまともな人間が車上荒らしに手を染めるはずもありませんが。


■犯行直後の車内の状態。後部座席に投げ入れられた大きな石が、凶悪さを連想させる

*4台のリール

 犯人は石を投げ入れてガラスを割り、そこから手の届く範囲にあるものを物色して持ち去ったようです。盗まれたものは、後部座席に置いてあった小さなバッグひとつだけ。しかしその中には3台のRoss Reelと、Hardyのフェザーウェイトが1台の計4台のリールが入っていました。被害総額はともかく、思い出のあるリールばかりでしたから悔しくてなりません。荷室にはリールよりも高価なカメラとレンズ、ロッドも数本入っていましたが、交通量の多さと人目をはばかってか、全部を物色するほどの度胸はなかったのでしょう。リールが犠牲になって、他のものが残った……そう考えることにして、自分を慰めています。

 すぐに警察を呼び、事件の後処理をしてもらいました。犯行時の状況から想像すると、かなり大胆な犯行であるように思えます。おそらく常習者なのでしょう。1分もかからないで、すべての犯罪行為を終えていたのではないでしょうか。通りがかりの目撃者もなく、草刈り作業の人たちも気が付かなかったようです。

 警察では、独特の言い回しの調書を書いて、儀式的なやりとりをしましたが、時間だけはけっこうかかりました。立ち会っていただいた駐在所の警察官は、人の良さそうな初老の方でしたが、「運が悪かった、気の毒ですねぇ……」といった対応をするばかりで、犯人を必ず捕まえてみせるとか、こうした犯罪を許さないといった意気込みを、まったく感じられなかったのが残念です。自分ひとり頑張ったところでどうにもならないことかもしれませんが、市民を犯罪から守る立場にある警察官なら、ポーズだけでもいいから、気骨ある態度を取って欲しかったと思います。犯罪検挙率は、これからも下降の一途を辿るのでしょうか。

 割られたガラスは、加入していた車両保険で修理できました。こちらは保険会社のほうで、迅速に修理工場の手配をしてもらえたので、旅のスケジュールを変更しなくて済みました。けれども車上荒らしの盗難品までは保険が対応していなかったので、リールは盗られ損になりそうです。

 大好きな北海道で遭遇した不愉快な事件。誰もが同じような目に遭う可能性はあるわけですが、いろいろな点で制限や制約のある旅人にとって、対処しがたいことでもあります。犯罪者にとっても、そこを狙ってくるわけですから、車の中の荷物は最小限にして、貴重品は絶対に置かないようにしましょう。人によっては、盗られてもいいようなものだけ車内に残し、ロックをしないで駐車する人もいるようです。旅人には難しいことですが、それもひとつの方法だといえるでしょう。

 そんなことを考慮しなければならない社会情勢こそが最も大きな問題点なのですが、自分の身は自分で守れという原点に立って、あらゆる事に対処すべき時代になったと考えたほうがいいのかもしれません。


■このような状態で、修理工場まで約80kmの道のりを走りました。かっこわるいですが、雨に降られなかっただけ幸運だと思わなければ

2005年7月
佐藤成史

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