佐藤成史FF徒然草第22話、フライフィッシング佐藤成史FF徒然草第22話、フライフィッシング佐藤成史FF徒然草第22話、フライフィッシング
佐藤成史
FF徒然草 第22話

☆秋風の渓で
 9月後半の渓風景


■高原の秋
ススキの穂が揺れる。秋の空気は清々しい。

*故郷の渓で

 いつになく、釣りに出かける回数の多かった今年の9月。それだけにいろいろなことに気づいたり、あらためて考えさせられたりする機会も多くありました。

 日本の一般的渓流では、春に解禁してから時間が経つにつれ、魚の資源量(生息量)は急激に減少していくのが普通です。特に里川における5月の連休、山岳渓流におけるお盆の期間は、渓魚たちの虐殺週間に相当します。川に入るキープ派釣り人の数が増えると、それに反比例して魚資源は減少の一途を辿ります。

C&Rが厳密に守られている場合を除いて、一般的な管理システム、管理機関には、極端な資源磨耗を防ぐ手立ても能力もありません。そういうものとあきらめているのが現実ですが、何とかしたい問題ではありますね。

 特に有名釣り場では、いやがうえにもそうした実態が顕著に表われます。秋になると釣りにならない渓の何と多いことか。そんな現場を見るのが辛くて、夏以降は渓に通うのをやめてしまう友人もいるくらいです。

 秋は魚たちの移動シーズンでもありますから、そのせいもあって、同一河川内における区間ごとの資源量に大きな差が生じる場合も多くあります。つまりアタリ・ハズレが多いということで、そういった点でも秋の釣りはギャンブル的になりがちなのです。

 先月の10日〜11日の二日間、神流川で「第6回神流川C&Rフォーラム」が開催されました。毎年のように参加しているので、なじみの顔と会うのも楽しみです。

そして神流川には、たくさんの魚が残っていました。春以降、何回か成魚放流しているせいもあるのでしょうが、この季節にしては異常に多い魚影です。個人的には、実際の1割程度の魚影があれば充分だと思うくらいですが……。

 この中から、ある一定の時間しか現われない魚や、野性味の強い個体を選んで釣るのがとても面白く、思わずそうした変則的な釣りに没頭してしまいました。

 あんまり面白いものだから、フォーラムの1週間後、DVDのロケにかこつけて、再び神流川を訪れました。そのときは食い気よりも色気の個体の数が増え、秋の訪れを感じましたが、食欲のある魚だけを選んで釣っても、充分過ぎるくらいの結果が残せました。

そのときの模様を収めたDVDは、近い将来ビデオメッセージさんのサイトから購入することができるはずですのでお楽しみに。

 すでにおなじみのシャロムの森にも、9月だけで5日間ほど出かけました。そのうち3日間はDVDのロケ、あとの2日間はスクールでした。

 管理という点ではほぼ完璧な状態にあるシャロムの渓では、本来あるべき渓流の様子がそのまま残っています。春から資源の磨耗は一切なく、魚たちの移動だけが区間ごとの資源量の変化を表わしています。しかしこの5年間放流は一切なく、自然にまかせたままの渓流ですから、神流川のような過密状態はありえません。そして河川の形質上、魚たちはとても敏感で釣りづらいですから、狙った魚を釣るのは至難の技です。

 こうした釣りもたまらなく面白いのですが、この模様も前述の神流川と併せて、DVDにその様子が収録されています。

*秋の夜長に

 禁漁直前には、長野方面のいくつかの渓を歩いてきました。ターゲットはヤマトイワナで、その目的は現地の友人たちの協力もあって運良く達成できたにせよ、川の状態は前述した群馬県の2河川に較べると相当に悪い状態でした。3連休の直後、そして渇水という悪条件が重なりましたが、河川の状態や規模に見合わない資源量の減少を強く感じました。

 しかしながら、秋の気配を濃くした高原の空気は爽やかで、沢風に揺れるススキの穂を眺めながら、とても充実した時間を過ごすことができました。

それぞれの地域には、それぞれの時間の流れや季節の移ろいがあります。渓を歩きながら、そんな自然の素晴らしさを体感できる幸福は、渓流釣りを愛す人たちに与えられた特権のようなものです。それは本来、釣れる釣れないなどといった生臭い話を超越したところにあるものなのかもしれません。しかし、不自然な魚の少なさを感じることは、あまり気分の良いものではないですね。せめてこれがありのままなのだと、実感できる程度の魚は残っていて欲しいものです。

 禁漁を迎え、少し落ちついた気分で秋の夜長を過ごしています。マンションの7階に住んでいても、この季節は虫の音がよく聞こえます。川を歩きながら感じる強烈な季節感に較べれば、わずかな草むらに棲む虫たちの鳴き声など、ほんのささやかな秋の証なのかもしれません。しかし今シーズンを振り返りながら、静かな夜を過ごすときのBGMとしては最適ですね。そんなことからも、秋という季節はなんて素敵なのだろうと、あらためて感じる今日この頃です。


■秋ヤマメ
神流川の尺ヤマメです。立派な胸ビレですね。

2005年10月
佐藤成史

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