佐藤成史連載

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佐藤成史
佐藤成史(さとう せいじ)
【プロフィール】
 1957年、群馬県前橋市生まれ。北里大学水産学部水産増殖学科卒業。日本全国はもちろん、アメリカをはじめとする世界各国を釣り歩く。
 マッチング・ザ・ハッチの釣りだけではなく、総合的なマッチング・ザ・X(詳細は著書「ライズフィッシング・アンド・フライズ(地球丸刊)」を御覧下さい。)の理論で釣りを展開。フライフィッシングをさらに奥深い世界から捉えた眼力、分析力は他の追随を許さない。
 著書多数。テレビ・ビデオの企画、出演などで活躍中。

■ FF徒然草 第14話
☆ フィールド展望 その2.
……川と魚と、釣り人と……

*放流量

 いよいよ渓流釣りシーズンが開幕しました。2月1日に解禁を迎えた岐阜の長良川水系郡上八幡あたりなど、初日から大雪に見舞われ釣りどころではない様子。16日に解禁を迎える長野の千曲川上流域も、今年はその後もこの冬一番の寒波は勢いを増して、近畿地方から東海地方、おまけに八丈島にまで1997年以来の積雪をもたらしたというから驚きです。
 しかし2月3日の時点では、僕の住む前橋では積雪ゼロ、冷たい北風が吹き荒むだけ。次の寒波が来る2月8日あたりに雪の予報が出ていますが、どうなることでしょう。
 さてさて、本題に移りましょう。前回からの続きで今年のフィールド展望がテーマです。今回は川と魚の関係、そしてそこに釣り人が加わることで発生する、魚資源の放流についてお話してみたいと思います。
 皆さんご承知のように、我が国の渓流釣り場のほとんどは、人為的な放流によって資源量が維持されています。そして悲しいかな、放流なくして釣り場は釣り場として機能しません。
 それではいったいどれくらいの量が放流されているのでしょう? おそらく、数字でそれを認識している人はほとんどいないと思われます。そこで群馬県を例に、平成15年度のヤマメとイワナの放流量を紹介いたしましょう。
  
   ヤマメ         イワナ
◇稚魚:1,103,941(尾)   300,000(尾)
◇卵 : 110,000(粒)   
◇成魚:  38,813(kg)    1,800(kg)
(参考資料:平成16年 群馬県第五種共同漁業権漁業協同組合遊漁規則集 群馬県蚕糸園芸課)

 この数字は、群馬県内でヤマメ、イワナの漁業権を有する組合が放流した量の総計です。
 これらを放流する資金は、もっぱら一般の釣り人……いわゆる遊漁者から徴収された遊漁料金でまかなわれています。内水面の漁協では、漁業権という権利を有する代わりに、増殖義務が発生します。増殖義務とは魚を増やすこと……安易に解釈すれば、魚資源の放流ということになります。そしてこの放流量に関する論拠(?)もあるにはあるのですが、そのあたりの仕組みはまた別の機会にお話しするとして、皆さんはこの数字を見てどんなふうに感じられるでしょうか? 河川状況や首都圏から人が押し寄せることを前提にしたとき、これは妥当な数字に思えるでしょうか?
 その判断は皆さんの裁量におまかせするとして、とりあえず現実を把握しておかなければなりません。
 放流した魚は、もっぱら釣り人が釣り上げ、それを持ち帰ることで急速に資源が減少して行きます。釣り場としての面目を保てるのは、解禁後のたった数日という釣り場も少なくありません。そしてこれだけの放流量がありながら、このうちのいったい何パーセントの魚たちが産卵期まで生き抜いて、再生産に寄与しているでしょうか。稚魚や卵で放流された資源は、いったいどれくらいの確率で生存・成長して年を越し、やがて迎える産卵期まで生き残ることができるのでしょうか?
 あるいはまた、こうした放流量の恩恵を実感する人はどんな人たちでしょうか? それはおそらく、解禁日にクーラーボックスに魚を満杯にして持ち帰る人くらいかもしれません。一般的には、どうしてこんなに釣れないのだろうと、肩を落として帰る人のほうが圧倒的に多いのではないでしょうか。
 群馬県内の各漁協では、ヤマメやイワナの制限尾数を20尾と遊漁規則で定めていますが、今のところこれが守られているとは思えません? ある漁協の組合長さんは、その制限尾数が頭に入っていないことを露骨に示した口調で自慢話をしていました。そんなことからも、現実は厳しいものがあると想像できます。
 昨年のように台風が多い年では、秋の渇水期に水位の変動が大きくなり、自然産卵された卵や浮上稚魚への影響も懸念されます。これは今年度よりも、親魚になる来年、再来年以降に影響が出てきますが、こんな年を補う意味でも、安定した資源の確保が望まれます。

* 魚資源の確保
 
 「釣れた魚を持ち帰るくらいで魚はいなくならないよ」と、知ったような台詞を堂々と口にする人がいます。しかし、いなくならないはずの魚を、毎年毎年100万尾以上の稚魚と、30t以上もの成魚で補填して、それでも尚、公共性の高い里川や一般河川の魚影がシーズンを通して安定しないというこの現実をどう説明すればいいのでしょう。いったい何を根拠に、釣りくらいで魚が減るはずがないという苦し紛れの自己弁護的発想を展開するのか理解に苦しみますが、資源量激減の実態を見る限り、釣り人の存在が大きく影響していることに疑問の余地はありません。たとえゼロにならなくても、釣り人の存在は、渓流魚の資源を限りなくゼロに近い領域まで枯渇・滅亡させるには充分な威力があると考えたほうが自然でしょう。また、そうした最悪のシナリオを前提に、釣り場のマネージメントが行なわれていくべきかもしれません。
 現実にフィールドで起こっていることは、入れた分だけの資源がそのまま抜き去られるという現象です。またそれを防ぐレギュレーションも確立されていませんから、放流した資源の磨耗をただ漫然と眺めるだけという現実が延々と続いているだけです。漁協は放流という義務という役割を果たしさえすれば、それでいいというスタンスでいる場合が多いようです。
 そのような状況では、例えば100万尾放流しようと、200万尾放流しようと、それが消失するまでに、2週間か3週間かの違いがある程度にすぎません。したがって、シーズンを通して安定した資源量を期待できる釣り場など、望むべくもないのです。
 そんなわけで、せっかくの大量放流が生かされていないのが我が国の現実です。
しかしこの地球上には、放流量ゼロでも、釣り場として一級の魅力を備えているばかりでなく、安定した資源量をも確保しているフィールドがたくさんあります。
 そこで何がそうしたところと違うのか……ということを考えると、辿りつくところは釣り場をマネージメントするシステムの違いにあると思わざるをえません。しかしそのシステムを支える背景には様々な要素が複雑に絡み合っています。例えばそれは民意であり、地域社会であり、そこに直接関わる人たち意識や価値観などです。これらの中でフィールドに対する意見の一致が見られない限り、現状に変化が起こるはずはありません。実に難しい問題ですね。

 ということで、次回は釣り場のマネージメント、つまり管理に関わる諸問題の中で、現行の何が良くて何が悪いのかという点について、もう少し掘り下げてみようと思います。

 佐藤成史


前橋市内の利根川本流
 大小の支流に放流されたヤマメたちの生き残り組は、最終的に本流筋へと流れ落ちてくる。運の良い魚はそこで大型化して生涯を全うすることもあるが、その確率はひじょうに低い。さらにそれがこんな漠然とした広い流れにいるとしても……


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