佐藤成史連載[毎月1回月初更新]


佐藤成史連載徒然草
佐藤成史(さとう せいじ)
【プロフィール】
 1957年、群馬県前橋市生まれ。北里大学水産学部水産増殖学科卒業。日本全国はもちろん、アメリカをはじめとする世界各国を釣り歩く。
 マッチング・ザ・ハッチの釣りだけではなく、総合的なマッチング・ザ・X(詳細は著書「ライズフィッシング・アンド・フライズ(地球丸刊)」を御覧下さい。)の理論で釣りを展開。フライフィッシングをさらに奥深い世界から捉えた眼力、分析力は他の追随を許さない。
 著書多数。テレビ・ビデオの企画、出演などで活躍中。


■FF徒然草 第26

☆水生昆虫とフライパターン……その2

 ……ライズ対応、サスペンド系の極小パターン

*解禁間近

 1月は慌しく過ぎて、はや2月を迎えてしまいました。

 2月といえば解禁です。
 岐阜や福井や愛媛では、2月1日解禁日の河川があります。16日には長野でも解禁になる川が多いので、皆さんむずむずしてくる頃かと思います。

 でも、3月になれば全国ほとんどの都府県で解禁になりますから、それまであと1ヶ月もないわけで、それを思うとやっぱりどきどきしてきます。

 とはいっても、最初から山奥の渓へは入れません。そのフィールドはとりあえず雪や寒さの影響の少ない里川に絞られてきます。

 この時期、流れの緩いプールなどでユスリカの羽化に反応するヤマメ釣りが面白いですね。数匹の群れでクルージングしながらライズする銀毛化したヤマメたちを狙うのは楽しいし、やたらと神経質な成魚放流されたヤマメ相手もけっこう骨が折れるものです。

 今回はそんな渓魚たちを相手にするときの必携パターンを紹介しようと思います。しかも巻くのがとても簡単な単純なフライばかりですので、どうぞ参考にしてください。

*3つのサスペンドパターン

 水面から吊り下がるようなカタチで浮くフライ……つまり、水面に一部を残して、ほとんどの部分を水面下に沈めたパターンをサスペンドパターンと呼んでいます。

 その状態は、水生昆虫の羽化過程をイメージしている場合だけでなく、陸生昆虫が水面ギリギリに流下する状態を表わすこともあります。これから紹介する3つのパターンは、いずれもユスリカが水面下で脱皮する寸前をイメージしたものです。サイズはいずれの#20よりも小さいことを前提にしてください。

 サスペンドパターンは、アンカーを付けて水面から吊り下がっているようなものですから、とても姿勢が安定しています。フライが動きづらいということは、安定したドリフトにもつながります。つまり、より本物に近い状態でドリフトさせやすいわけなのですね。

 サイズの小さいフライはドラッグ影響を受けやすく、そのためフライとの接続部分から20cm前後のティペット部分を水面下に入れる必要があります。構造的な動きづらさは、ドリフト技術を補ってくれるので、渓魚を釣るためにたいへんプラスに作用するのです。

■スティルボーン・タイプ(写真A左) 

 シャック(脱皮殻)をぶら下げた状態のスティルボーンをイメージしたサスペンドパターンです。背中にハンプバックさせて取り付けたCDCの位置から、水面から垂直にサスペンドはせず、シャック部がわずかに沈む程度の角度を保ってサーフェスフィルムをつかみます。

 ユスリカの羽化に対するライズの場合、細長いシルエットがトリガーになることが多く、この点を取り入れたパターンは必ず用意していなければなりません。

 細長いシルエットでサスペンドする構造……というのがこのフライのコンセプトです。その2つのポイントを外さなければ、どんなマテリアルで巻き上げても問題ありません。

 ちなみに写真のフライはシャック部にハックルティップ、ボディは黒のスレッドのみ、ウィングは白いCDCを使っています。

■VVタイプ(写真A中央)

VVというのはVertical Variant、という意味で垂直に近い状態でサスペンドする何かしらのモノ……というような意味です。

 名前の通り、特にユスリカだけを意識したパターンではなく、水面と絡んで流下する様々な昆虫類をイメージしています。効果としては、テレストリアルとして真夏の渇水時のスレた魚にも抜群の効果があります。小さければ何でもよいというような、ヒネクレ気味の魚向きです。

 写真のフライに見られるような長いシャンクは、機能的にはアンカーとして、イメージ的にはシャックという解釈です。したがって、とにかく小さく巻きたい場合は短いシャンクのフックに巻けばいいだけです。

 マテリアルはピーコックとCDCのみですが、インディケーター代わりのCDCは長く少量取り付けるか、短く多めに取り付けるか、状況によって使い分けます。

 スレ気味の魚には、水面にあまり痕跡を残さない前者のタイプが効くようです。

■ミッジピューパ・バリアント、サスペンダー・タイプ(写真A右)

 ボディ部分に印象的なきらめくマテリアルを使ったタイプのフライです。これは文句なく対ユスリカの羽化専用のパターン……すなわちハッチマッチャーとしての役割を担ったフライというわけです。

 しかしながら、多くの人が使うパターンですので、競争率の高い釣り場ではあまり効果を期待できないかもしれません。でも、このパターンを持っていないと、精神的に不安になります。それほどハッチマッチャーとしての実績が抜群なのです。


■わが家のベランダに飛来したユスリカのアダルト、成虫です。
 [PHOTO BY SEIJI SATO]

■ユスリカのピューパを飽食していたヤマメの異内容物。シャック単体が目立つのは、捕食後に本体と切り放されたものだと思われます。
[PHOTO BY SEIJI SATO]


■3つのサスペンドパターン
(写真A)

これらはあくまで雛型です。アレンジはご自由に。
[PHOTO BY SEIJI SATO]

【佐藤成史著書】
「ライズフィッシング・アンド・フライズ」
              (地球丸刊)

「瀬戸際の渓魚たち」
「The Flies part1渓流のフライパターン」
「The Flies part2水生昆虫とフライパターン」
「The Flies part3
   CDCパターンとイメージングパターン」
「ロッキーの川、そして鱒たち」
「ニンフフィッシング タクティクス」
           (以上つり人社刊)

「フライフィッシング」
「徹底フライフィッシング」
「渓魚つりしかの川」
           (以上立風書房刊)
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