☆アントの季節
……ハードシェル・アントのバリエーションなど
日本の山岳渓流では、シーズン開幕と共に陸生昆虫が渓魚たちの捕食対象の中心になることがよくあります。特に雪が多く、雪代が長引くような年は水温上昇が一気に訪れ、それに引きずられるように水生昆虫も一気にハッチしてしまうため、釣りが可能になる頃には水生昆虫が極めて少なくなっている……そんな現象が起こりやすいのです。 アント(蟻)という陸生昆虫は、その生活形態から翅を持たない個体が圧倒的に多く、移動のためには地面を歩行するしかありません。そのため、水際にエサを求めて出歩いていることころを流れに巻き込まれたり、雨で流されてしまったりと、川へ流入するリスクがとても高いのです。 また、水面に被さる木の枝を歩いているところを風に飛ばされることもあるでしょうし、落下・流入の機会は至るところに用意されています。 そんなわけで、渓魚たちは日常的にアントを見て捕食しています。それがフライ・パターンとしてのアントが重要な理由で、しかもその状態が初夏以降、シーズン終了までずっと続きます。 特に夕立や大雨の後、アントは威力を発揮します。あるいはその逆に、渇水で捕食物が限定されるときでも、アントの記憶が渓魚たちの脳裏から消えることはありません。 *フライング・GI-ANT 夏イワナ専用のパターンとして、一昨年くらいから使っているパターンです。 サイズは#8〜#10と大型、見た目はドライフライそのものですが、実際の使用ステージは水面・水中兼用です。 白泡の中に打ち込んで、スーッと引き上げたり、強い流れに沈めた後に浮上させたり急停止させたり……と、存在感を大袈裟にアピールして使います。 ウィングのエルクヘアは、主にドライフライとして使うならば多めに取り付けます。水中兼用にする頻度が高ければ、状況に応じて量加減を調整すればよいでしょう。 視認性の確保だけでなく、これがあることで水流の抵抗による回転を防ぎ、一定の姿勢を保ってくれます。本体のハードシェルがかなり重いので、叩きつけるようなキャストで水面を割るくらいの浮力が使いやすいと思います。 大型の羽蟻をイメージしていますが、実際はアトラクター的要素の強い、テレストリアル・バリアントパターンといえるでしょう。 レッグにはブラックフラッシャブーを使っていますが、各色のラバーレッグなどで代用しても楽しいです。 また、羽蟻は夏のある時期、大量に発生することがよくあります。 そのときばかりはフライング・アントのパターンがハッチ・マッチャーとして機能します。この場合はアトラクター的な役割は失せ、サイズの一致を優先して考えなければなりません。 *ハードシェル・アント・ベーシック ウィングレスのアントをイメージしたパターンです。 センターにハックルをパラリと巻いたり、ブラックフラッシャブーをレッグにあしらって存在感を高めますが、基本的には極めて簡素なパターンといえるでしょう。 構造上、水中での使用に特化したタイプですから、フライから40cm〜50cmくらいの位置に小さなインディケーターを取り付け、水面付近に漂わせて使うといいでしょう。ニンフを使うときとまったく同じ感覚で扱って問題ありません。 渇水で神経質になった魚には、やはりこのように単純なシルエットのフライが効果的です。サイズは#8〜#16と、広範囲に用意しておくことを勧めます。ちなみに写真のイワナにくっついているフライは#10、自分の場合はこのサイズを使う機会が最も多いようです。 アントの季節が始まります。 アントは夏の山岳渓流のみならず、あらゆる場面で釣りの中核を占めるパターンになりえますから、より多くのバリエーションを用意しておきたいものです。 佐藤成史 |
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