佐藤成史連載[毎月1回月初更新]
佐藤成史
佐藤成史(さとう せいじ)
【プロフィール】
 1957年、群馬県前橋市生まれ。北里大学水産学部水産増殖学科卒業。日本全国はもちろん、アメリカをはじめとする世界各国を釣り歩く。
 マッチング・ザ・ハッチの釣りだけではなく、総合的なマッチング・ザ・X(詳細は著書「ライズフィッシング・アンド・フライズ(地球丸刊)」を御覧下さい。)の理論で釣りを展開。フライフィッシングをさらに奥深い世界から捉えた眼力、分析力は他の追随を許さない。
 著書多数。テレビ・ビデオの企画、出演などで活躍中。

■ FF徒然草 第12話
☆ 除湿剤、乾燥剤を活用しよう
        ……シリカゲルで快適フィッシングライフ

* ウェーダー内部の除湿

 これから空気の乾燥する季節だというのに、除湿のお話をするのもなんですが、オフの間でないと、なかなかこうしたことに気が回りません。
 ということで、今回は実用的な内容でまとめたいと思います。
 フライフィッシングの必需品のひとつ、ウェーダー。ようするにナガグツですが、最も一般的なのは胸までの丈があるチェストハイ・ウェーダーと呼ばれるタイプのものです。渓流を歩く際、いつもそんなに深い場所を歩くわけではありませんが、備えあれば憂いなし、万一深みにハマッってしまった場合でも、冷たく不快な思いをしなくてすみます。それに防寒・防風にも役立ちますから、フライフィッシングを嗜む人たちの多くは、オーバースペック気味の性能を持ったチェストハイを選ぶのだと思います。
 最近のウェーダーは、ゴアテックスなどの防水・透湿性能に優れた素材が使われていますが、ソックス部のネオプレーンの部分や、体とタイトに接触している部分に含まれた水分は抜けづらいもの。着用して活動しているときはそれほど気になりませんが、一度脱いで再着用するときなどちょっと嫌な感じがします。ましてや乾燥させるのを忘れて、温度の高いところで保管していたりすると、最悪の場合はカビにやられることもあります。そうでなくても、抜けきらない水分の匂いはあまり気持ちのいいものではありません。
 こうした症状を防ぐのが、写真にあるような、除湿・消臭機能を併せ持った乾燥グッズです。これを1日の釣りが終わったらウェーダーの中にポイッと放り込んでおけば、乾燥剤と接触している部分はものの見事に乾きます。このとき、乾燥剤が爪先部分まで届くように2〜3回上下にゆすってやるのがコツです。これだけで、翌朝にはサラサラ快適に再着用できます。
 透湿性能に乏しい素材のウェーダーでは、さらに効果が期待できるでしょう。数本まとめて入れたくなるかもしれません。また、裏返して乾かせないブーツフット・タイプでも、乾燥剤のありがたみを実感できることでしょう。
 入手するのも簡単です。どこの町にでもある大型ショッピングセンターに行けば500円〜600円くらいで販売されています。
 本来の目的は、乾きづらいブーツや運動靴などを除湿するためのグッズです。原料がシリカゲルで、繰り返し使えるタイプがお勧めです。車のダッシュボードにでも置いておけば、あっという間に乾いて再利用できます。乾燥状態を示すインディケーターが付いているのも便利です。
 こうした製品を釣り用グッズとして流用するのは、自分ではなかなか気が付きません。僕の場合も、最初は静岡に住む古い友人から教わりました。それ以来、常に10数本を常備するようになってしまいました。

*マテリアルの乾燥、保存などにも

 実に当たり前の使い方かもしれませんが、僕はこれを、ハックルケープやヘア類のマテリアルを保管してあるケースに入れています。このとき、ヒノキを原料にした防虫剤などと併用していますが、マテリアル特有の匂いも薄まり、もちろん害虫が発生したことなど一度もありません。
 写真右上のマス目のシートは、100円ショップなどで売っている乾燥剤です。ようするに、お煎餅等の湿気が苦手な食物のパッケージに入っている乾燥剤と同類のものです。
 これは任意のサイズにカットできるうえに、薄くてかさばらないため、様々な用途に使えます。
 例えば釣り場で持ち歩くカメラケースには、これを2マスぶんカットして、底部分に両面テープで貼り付けています。デジタルカメラは湿気が誤動作の原因になることが多いので、湿気の多いときなどには安心できます。
 また、ケースやパックそのものに強い防水機能がありながら、透湿性に乏しい素材で作られているものでは、それがかえって仇となり、中身が結露によって濡れてしまうことがあります。
 その例になりますが、以前こんな経験をしたことがあります。
 それは防水シート内蔵のバイク用デイパックを使っているときでした。急な雨に遭ったので、早速内蔵シートでパックをスッポリくるみ、防水機能を試してみました。ところがその結果、それが通気を遮断して、中に入っていたレンズがびしょ濡れになってしまったのです。そのときは長時間に渡って、極端に温度差の激しい状況に置かれていたのですが、まさか結露が原因で、高価なレンズを失うとは思ってもみませんでした。バイクのように強い風を受け、通気が強制的に行なわれるのならちょうどいいのかもしれません。使い方を誤った例です。
 それ以来、そのような仕様の道具を使うときには、必ずその中に乾燥剤を入れるようにしています。あるいは、濡れては困るものは、ゴアテックス製の袋などに入れておくのもよい方法です。
 それから、ベストの中に数シート入れておけば、フライボックスを水に落としてしまったときや、ベストのポケットが濡れてしまったときなどに便利です。ジップロックなどのしっかり防水できるビニール袋に入れておけば、いつでも乾燥した状態で使えます。
 ただし、広い面積のものや空気中からジワジワ水分を吸い取る性質のものなので、フライの乾燥や、衣類などからスポット的に水分を吸収する用途には向きません。
 まだまだいろいろなことに使えそうです。皆さん自身にも、こうしたグッズの使い道をいろいろ試していただけたらと思います。

 佐藤成史

シリカゲル
◎乾燥剤いろいろ
これはほんの一例です。ショッピングセンターの除湿・乾燥剤コーナーには、いろいろなタイプのものが販売されています。写真のものは、スティック状の袋1本が約150g、これで90mlの水分を吸湿できるそうです。[PHOTO BY SEIJI SATO]

佐藤成史東北釣りシーン
◎釣りシーン
ウェーダーはやはりゴアテックスが快適。しかし、いくら透湿性能が高くても、温度差(気温、体温と水温)の大きいところで活動すると、透湿機能が追いつかないことがあります。

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