■佐藤成史FF徒然草 第27話 ☆水生昆虫とフライパターン……その3 ……スピナーとスペント・パターン 3月を迎え、ほぼ全国的に渓流釣りが解禁になりました。 それでもやはり、釣る人は釣るようです。神流川や桂川などでは、悪天候にも関わらず良い釣りをされた方たちから次々と情報が入ってきました。そんな話を聞いていると、居ても立ってもいられなくなります。 さて、今回も前回からの続きでフライパターンのお話しです。今回はスピナーとスペント・パターンについて、考えてみることにしましょう。
* ハッチの裏側で ご承知のように、スピナー(成虫)とは、メイフライの不完全変態の最終型です。つまり水中生活のニンフ(幼虫)の時代から羽化を経て、陸上生活に適応するためのダン(亜成虫)になり、さらにもう一度脱皮をしてスピナーになるわけです。 また、一般的にスペントといえば、カディスやユスリカなどの水生昆虫が完全変態を完了した最終型のアダルト(成虫)の末期……産卵を終えたか、その寸前……の状態を指します。 これらが流下するときの特長は、ウィングを押し広げたような状態、あるいは複雑に折りたたんだような状態で、水面に張り付くようにして流れることです。このとき、スピナーやスペントの体表面積全体の少なくとも半分以上が水面に接した状態で、脆い表面張力によって水面をつかんでいると考えてよく、ときには全体がヒタヒタ状態で水面下に沈んでいることもあります。 こうした流下状況は肉眼で判断しづらく、それよりも目立ちやすい他のハッチや流下があった場合、それらがマスキングとなって気が付かないことがよくあります。異種、同一種を問わず、流下とハッチが同時に起こる場合もありますが、スピナーやスペントの流下は、基本的にはハッチと切り離して考えたほうが良い結果を導き出せるでしょう。 そんなわけで、ライズがあるのに自分の判断や印象で選んだフライに反応が鈍いようなら、スピナーやスペントの存在を意識しながら、再度状況分析を行なってみることをお勧めします。ハッチの裏側で起こるスピナーやスペントの流下は、それを強く意識しないとなかなか見抜けないものなのです。 * ベースとなるパターン それではそんなとき、どんなフライを使えばいいのでしょうか? 基本的には前述したように、フライの表面積の半分以上が水面に接するようなタイプを使うのですが、これには二つの考え方があります。
そのひとつは、例えば一般的なメイフライのスピナー・パターンのように、単純で表面積の少ないフライに仕上げることです。メイフライのスピナーをイメージするのであれば、こうすることで何ら問題のないハッチマッチャーとして使うことができるでしょう。 もうひとつは、特にスペントを意識したパターンを用意するのでなく、アダムズやグレイフォックスなどのスタンダードパターンのドライフライを流用する方法です。また、マーチブラウン、ライトケイヒルなどのウェットパターンも流用できます。 これらのフライを指で潰してカタチを変形させたり、場合によってはマテリアルをカットすることで、スペントの状態をイメージするフライに見せるわけです。この方法は大型のメイフライ・スピナーやカディスのスペントの流下に有効です。
後者の使い方では、スピナーやスペントの流下時によく起こる、クラスター(塊)を偏食する魚にも対応できます。つまり、流下するうちにスピナーやスペントが互いに重なり合って大小の塊になる現象ですね。これは羽化量、流下量が多い状況下ではよく起こることですから、併せて意識しておくべきでしょう。特に強い風が吹いていたり、流速差によって流下物が滞留するような場所では、クラスターは要注意です。 雑に巻かれたフライは、こうしたイレギュラーな使い方を最初から演出していて、実はそれが効果を生み出していることも多々あります。けれども、丁寧に巻かれたフライでは、そのフライ本来の性能を備えながらも、こうした使い方にも対応できるわけなのですね。 したがってフライというものは、できるだけ丁寧に巻いておいたほうが、より多くの場面に対応可能となるわけです。フライタイングに精進していると、こんなところにもその努力が反映されてくるものなのです。 佐藤成史 |
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