冷たい雨と強風に打ちひしがれて、今年の桜は何だか気の毒です。 私の住む前橋はそんな様子ですが、皆さまの町はどんな春を迎えているでしょう。 桜が咲く頃のメイフライといえば、何といってもオオクママダラカゲロウです……が、あらゆるメイフライが飛んでくるわが家のベランダに、今年はまだオオクマの姿が見えません。シロハラやサホコカゲロウと、小さなユスリカばかりが網戸に止まっているだけです。 *パラシュート・パターン
季節が進んで水生昆虫の羽化が活発になると、渓魚たちの視線は次第に水面近くへと向けられてきます。さまざまな種類の、そして様々なサイズの水生昆虫……メイフライ、カディス、ストーンフライ、ユスリカ等々……が入り混じり、それぞれの羽化方法で水中生活と決別するわけですが、必ず通過しなければならないのが“水面”という結界のようなステージです。 そこは渓魚たちにとってはこのうえない捕食場所、水生昆虫たちにとっては墓場か地獄みたいなものかもしれませんが、このステージがあるからこそフライフィッシングの面白さが永遠でもあるわけですね。 パラシュート・パターンは、そんな水面上で使うドライフライの代表的存在です。 何はなくとも、パラシュート・パターンさえあればドライフライの釣りは楽しさを増します。視認性が良く、安定した浮力を備えた機能性こそがパラシュートの身上ですから、これをうまく使うことで、楽しみも倍増するというわけです。 そのぶん呆気なく見切られたり、渓魚たちに学習されやすいという欠点はありますが、それを補う使い方が、いわゆる「釣り上がり」という方法です。つまり、釣る側が移動することで、数多くの渓魚とコンタクトして、それぞれに少ない回数を見せることで釣りを進めていくやり方です。釣り上がりはそうやって行なう釣りですから、パラシュートは即効性があってとても使いやすいのです。 その逆に、里川のライズの釣りでは、1尾の渓魚に対して何回もフライを見せてやらなければならないことが多くなります。そんなときは、パラシュートを軸にフライのローテーションを組み立てても、それにあまり依存したり執着したりせず、できるだけ異なる印象のフライを順番に使うことを心がけましょう。この場合、パラシュートは単なる手持ちの駒であり、それ以上の何物でもありませんから。 *パラシュートのバリエーション その一方で、ハッチマッチャーとしてのパラシュート・パターンの実力もなかなか優れています。 けれどもそのときは、どこかの機能を切り捨てなければなりません。 例えばすっかりポピュラーになった“ガガパラ”というガガンボのアダルトをイメージしたフライでは、ハックルを極めて薄く巻くために浮力が犠牲になっています。イメージする対象の性質上、視認性は対処できても、イメージする状態や形状が浮力を伴わないものですから、ハッチマッチャーとしてそちら切り捨てるわけにはいかないのです。
そのほかにも、甲虫類やアリなどのテレストリアルをイメージしたドライフライにも、パラシュートのスタイルでまとめることで、一定の浮力を与えつつ、視認性を確保するという方法は有効です。 テレストリアルやフローティングニンフ系のパターンでは、水面から吊り下げるタイプのいわゆる“サスペンド・パターン”を多用しますが、この場合もパラシュートのスタイルはとても無駄がなく、きれいにまとめることができます。 前回のテーマで扱ったスペントやスピナーのパターンでも、パラシュート・タイプに仕上げることがあります。この場合はサスペンド・パターンとは反対に、水面から吊り下がらないように、全体が水面に張り付いて浮力を保つ工夫をしなければなりません。前述したガガパラでもそれは同じですが、テールを使えるメイフライのスピナー・パターンでは、ハックルとテールのバランスをよく考えて、ドレッシングを工夫してみましょう。 写真でいくつか例をあげてみたので参考にしてください。
でも、やはりフライボックスに入っていないと不安になるのは、アダムスやライトケイヒルなど、汎用性の高いパラシュート・パターンですね。フライボックスを埋めていくとき、先にこれらを巻いておくのが、僕の昔からの習慣です。
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